古いカメラレンズの活用(赤ハロ対策) 2014.11.30


中望遠で赤い散光星雲等を撮りたい時は、カメラレンズを使用されることも多いと思います。
もちろんモザイク合成で処理すると、より解像度も上がるようで、フォトコンの入選作品等は、
モザイク合成された物も良く見かけます。
しかしモザイク合成はスキルやソフトの敷居が高く、また沢山撮影しなければならないため、
なかなか大変な様子です。
なので私は散光星雲などの比較的大きな対象を撮る時には、カメラを購入した時に一緒に付いて来た、
いわゆるキットレンズを使用していました。

ただこれら付属のレンズは一般にズームレンズでF値も明るくないため、どれも星撮りにはあまり向かないようです。
自分がうまく撮れないのを機材のせいにするのは良くないと、我ながら思うのですが、(^^;
星撮りにはズームレンズではなく、単焦点レンズが良いと各記事で見かけるのも事実です。

しかし普段から写真を撮る人には、カメラレンズって値段なりの価値があると思うのですが、
私のように普通の写真を滅多に撮ることが無い者には、カメラレンズって眼視に使うことも難しいため、
どうしても割高感が否めず、購入する気にはなれません。

ところがネットを見ていると格安の単焦点レンズがいくつかあります。
キャノンの「撒き餌レンズ」と呼ばれる単焦点よりも更に安い単焦点レンズが、
ネットオークション等でわずか数千円で出回っています。

フィルム時代の古~いレンズです。(^^;


「・・・どうなんだコレ?」
ネット等で星撮り適性を調べてみますが、あまり有力な情報は得られずです。
もちろん普通の写真ならアチコチにレビューがあり、どの記事も軒並み「古いけどよく写る」というような、
好意的な評価の記事がほとんどなのですが、個人の思い入れ等も入っていそうで、
今ひとつ星撮りの適性が分かりません。


「・・・まぁ値段も値段なので試しに買ってみるか?」
と入手したのが「Super-Multi-Coated TAKUMAR」シリーズです。
42mmのねじ込みのマウントで(Tリングとは別のアダプタが必要ですが、いずれも1,000円程度から出回っています。)、
もちろん手ぶれ補正やオートフォーカスなど付いていませんが、いずれも星撮りには無用の長物。
これで星撮りに挑戦してみました。


で、こんなの↓撮れました。

2014年12月27日 23時50分頃~ 自宅庭
SMC TAKUMAR 1:4 200mm(絞り開放)
Canon Eos Kiss X2(新改造)
ISO1600 420sec☓8枚
SXW赤道儀にてPHDGuiding2でオートガイド
ガイド鏡 組立望遠鏡(接眼部改)
ガイドカメラ SA-49795


上の画像は、「YIMG」でダーク処理とコンポジットした物を、「PIT」で色合せしただけのもので、
強調処理は全く行っていませんが、星の周りが見事に真っ赤っ赤。(^^;
「赤ハロ」ってやつですね。
今回は試しに 絞りを開放で撮ってみたんですが、そのせいだけでは無さそうで、
他の135mmF3.5や、50mmF1.4を絞って使ってみても、やはり同じように結構盛大な「赤ハロ」が目立ちます。
ネット上でも古いレンズは「赤ハロ」が出るような内容の記事を幾つか見かけましたが、やはり結構強烈です。

ネットの情報では、赤ハロはピント位置を少しだけズラすことで出にくくすることも出来るようですが、
残念ながら私にそのようなスキルはございません。。。(^^;

しかし写った写真を見てみると、イメージサークルが35mmフィルム用(フルサイズ用)なためか、
絞り開放で撮っても星像は周辺まで良好な写りで、周辺減光や背景のムラもほとんど無しです。

ぬぅぅ。これは赤ハロさえなければ、素晴らしいコスパの星撮りレンズになりそうです。。。(^^;


なので試しに「FlatAid」の「青ハロ除去機能」をかけてみましたが、やはり赤ハロには効きませんでした。。。OTZ

しかしこれも「アクロマートで直焦点撮影(青ハロ対策)」で使用した、
RawTherapee」の「フリンジ低減」機能なら効果ありでした。

↓こんなふうに。(^^

ビバビバ!!(^^V
そしてこれ↑に強調処理を加えると、こんな↓感じになりました。

上の画像は私が散光星雲の画像処理等によく使用する「FlatAid」による星マスクもフラット処理も一切行わず、
この説明記事のために「Digital Photo Professional」(以下DPP)だけを使用して強引に強調処理した物なので、
星像の肥大はありますが、この状態でも赤ハロはほとんど出てきません。(^^

ちなみに赤ハロ除去前の画像に全く同じ処理を(DPPの「レシピのコピー」を使用しています)適用すると、

ウッハ~(^^;、赤ハロも強調されるため↑のような感じになってしまいました。
ただでさえ広角で撮る対象は、赤い散光星雲が多いと思われるので、さらに真っ赤っ赤になる事必至です。(^^;

なお試しに、上の赤ハロ軽減処理無しで強調処理をした画像に、後から赤ハロ軽減処理をしてみると↓

↑のように後からでもそれなりに効果はありました。
もちろん等倍で見ると、やはり強調処理前に赤ハロ軽減をかけておいたほうが、星像の肥大は軽減されますが。


この処理の仕方は「アクロマートで直焦点撮影(青ハロ対策)」で行った青ハロ低減と基本的にほぼ同じです。
ただし収差の出ている色が違うため、収差の出ている色に合わせて画面右下のイコライザーを調整します。
元画像では、星がやや緑がかっている物もあったため、わずかに緑色の補正もかけてみました。

それと、補正状況を プレビューで確認したい場合は、プレビュー画像を等倍に表示する事をお忘れなく。(^^

これで下の画面の赤丸のフリンジ低減「有効」のチェックを入れると、機能のON-OFFでの違いを確認できます。

↑は「フリンジ低減」機能OFFの状態。
そしてONにすると↓のように赤ハロが除去されます。

また↑の画面の赤丸で囲った辺りのチェックを切り替えてみても、色収差の状況が確認できます。


厳密な事を言えば、赤ハロ部分は星の色の赤い成分なのでしょうから、
これを除去するという事は、せっかく集めた淡い光の成分の一部をカットしてしまう事になるのでしょうが、
この価格でフルサイズ用のイメージサークルを持った単焦点レンズを入手できるのは、 大変魅力的です。
前述しましたが、周辺減光もほとんど無い上に、中心部の良像範囲を使えるためか、
開放で使っても星像はなかなかシャープで、キット物のズームレンズよりはるかに良好な写りだと思います。

もちろん普段使いにはかなり厳しい物があると思いますし、各メーカーがしのぎを削っている新しいレンズには、
デジタル時代に対応した素晴らしい性能があると思うので、新しいレンズを買えばそれに越した事はないと思いますが、
私のように星撮り以外にはカメラをほとんど使用されない方や、愛着のあるフィルム時代のレンズをお持ちの方には、
この方法も悪くないのではないでしょうか?


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